逆にこの時確かにそうなる。

逆に,このとき与式は確かに恒等式になる

喫茶店

昨日のこと。

基礎実験を終えて、電車に乗る。足がだるい。実験のためだけに学校に来て、帰る。それだけなのだが、どうにも体力が持たない。ただでさえ体力不足なのに、まるっきり運動をしないものだから、体中がおかしい。

あんまり疲れたので、ドトールに入ろうと思ったが、やっていなかった。他の店はないかと思い巡らすと、随分前に1回だけ行ったところがある。しかしそこは安くない。
その前回入った店をGoogleマップで探したときに同時に候補としていた別の店を思い出して行ってみることにした。

考えることは皆同じで、いつだって満員のドトールの捌け口となり、一人で行ったところで追い返されるだろうと思っていたが、店に入ると誰もいない。

客がいないのは結構なことだが、店員すらいない。

営業中の看板が掲げられ、店内に音楽が流れており、窓は開け放たれている。

こんちはあ、と声を上げてみても返事は無い。厨房の奥を覗いてみれば壁だった。

店員がいないとはどういうことだ!という怒りがこみ上げてきたが、そもそも店員が店にいなければならない理由は無い。ひょっとしたら法律的にはそんな義務があるかもしれなかったが、少なくとも僕に対する義務は無かった。

しばらく立ち尽くしていたが、私は休みに来たのだと自分に言い聞かせ、近くのテーブルに着く。

目の前にはCDラックとオーディオ機器が並んでいる。なるほどそういった趣向の店なのか。夜になれば、同じ趣味を持った人達が集まってくるのだろうか。あるいは、あまりに没頭しすぎて家から追い出された機器の類なのか。そんな趣味の延長みたいな店だから、気ままな店主は店を空にして、外でたばこでも吸っているんじゃないかとさえ想像できる。

しかし1分も見つめていると、そんなのはおおよそ期待外れだろうと察しがついた。
機械はパイオニアレーザーディスクプレイヤー、DENONカセットデッキ、Technicsのアンプ、そしてCDを見ると、カイリーミノーグにカーペンターズ...あとは分かんないや。

グレードは分からないが、この辺の機械はうちにもまだ健在だし、どうも両親と同じくらいの年代の店主なのだろうと推測して、いよいよ暇になってしまった。

生協で買ってきた本でも読んでいようかと思ったが、買った本がマーク・ピーターセンの「実践・日本人の英語」。ここで広げるのには抵抗がある。

かれこれ店に入ってから10分が経過していたので、もう5分経っても誰も来なかったら帰ろうと思って、うとうとしはじめると、ちょうど5分後に店主が現れた。

驚いたような顔をして、いらっしゃい、と言う。

僕が沈黙して店主の顔を見つめているものだから、いつまでたっても動きが無い。

あ、ああ、何がありますか。

何がありますか、ではない。店に来るや最初にメニューを見て何を頼むか決めていたのに、あるいは見なくたって僕はコーヒーショップでは紅茶を飲むと決めているのだから、白々しい質問だった。

日本では喫茶店でコーヒーを飲むが、喫茶店では文字通り紅茶を飲むべきではないか。しかし、カフェと言うと、途端にコーヒーを飲まなければならなくなる。ふむ、では紅茶専門店はなんと言えば良いのだろうか?カフェはフランス語ないしイタリア語であるから、お茶はテである。

テで優雅にアールグレイをすする僕。あまりに滑稽なので吹き出して店を飛び出してしまった。