逆にこの時確かにそうなる。

逆に,このとき与式は確かに恒等式になる

進学振り分け

現在の進路選択を語るためには、最も大きな影響を持つ範囲に限定しても、中学3年生の頃まで遡らねばならないだろう。

当時僕は、キラキラ意識高い系ITにわか起業家になろうと思っていた。2007年であるから、そういう雰囲気もあったのだろう。
テキトウなWebサービスを構築して、流行れば儲かる、といった甘っちょろい上にくだらない考えであるが、それでも真っ当な雰囲気があった。

高校に入ると、以上のような状況から、情報と経営という2つの分野から、大学を探すことになるのである。

経営管理は学ばないといけないと思っていた。周りにサラリーマンがいない環境で育ったのも原因である。

ところが、どうも情報よりも経営の方に傾いていくのである。まともにテクノロジーを理解している経営層が、日本は薄すぎるのではないかと感じたのだろう。

高校2年の時に、東大研修というプログラムが用意されていた。工学系研究科の研究室に志望を出して、1週間ほど泊まりがけで研究室体験をするのだ。僕はコンピュータがやりたかったのに、それは情報理工学系研究科にまとめられてしまっているから、申し込めない。この時に技術経営戦略学専攻(TMI)という専攻を知った。

技術経営という概念に惹かれた。ところが学部が存在しない。どうする。

技術経営ないし経営工学という領域を知って、あちこち学部を調べた。
東工大が先を行っている。大学院も、専門職課程(MOT)まで置いている。

ということで、東大→電子情報工学科→技術経営戦略学専攻を第1志望、東工大4類→経営システム工学科→技術経営戦略学専攻かMOTを第2志望として、受験をすることに決めたのである。

センター試験後、東工大を5類→情報工学科→TMIという流れに変更した。経営工学ばかり6年やってもどうかと思ったのか。記憶にない。

一浪しているときもTMIに行くことは変わらなかったが、学部学科を工学部のシステム創成学科知能社会システムコースに変更した。
滑り止めも、理科大の経営工学科と早稲田の経営システム工学科である。

僕はこの時、情報ではやっていけないと考えるに至っていた。技術経営に振り切ったのである。それは、僕が知財に強い興味を持っていたことが大きく与している。
小学生の頃から豊澤豊雄の著書を読んで育ってきた。発明学会も眉唾物だが、知的財産権に対する理解はそこらの一般人よりも深い自信がある(一般人として)。

それなら弁理士を目指してしまおうと考えたのである。となると、工学は一般にいろいろ学んでおいた方が良い。
また、日本企業の知財戦略もどうかと思ったのもある。

こうして、東大入学時には、新卒で弁理士となってどこか事務所へ就職してしまおうと考えていた。毎日新卒の求人を探していた(普通新卒で弁理士は採らないので)。

転機はいつだろうか。
はっきりと覚えているのは、大学2年生の春に、シス創Cに集まる人間が「チャラい」という証左を目の当たりにして一瞬で行く気が失せたことである。

ではどこへ行くというのか。その素地は、高校まで戻る。
高校の時SSH部に所属し、物理の研究をしていた。
問題は物理がサッパリ分からないことであった。分からない物理を勉強して実験して論文を書かねばならないのだから、苦痛以外の何物でも無い。発表1週間前になっても実験の成果が出なくて、夜眠れなかったこともある。
このあたりから、僕は似非理系だと自認するようになる。今もそう。

浪人しているときには、自然科学を一般に広く浅く学んでおくべきだと考えると共に、多少なりとも科学に携わる以上、科学史科学哲学を修めないのはどうかしていると考え、教養学部基礎科学科を視野に入れていたのである。
ところがこの時、既に再編が発表されていた。科史科哲は、学際科学科の方へ統合されることになるのである。そして、そちらには情報のコースが設置されるのであった。

シス創Cに行くのをやめたとき、すぐに頭に浮かんだのはこの学際科学科であった。
シス創Cに行くつもりだったのだから、進学振り分けの心配は皆無である。

僕はやる気がなくなり、3学期の成績を下げた。

言語にはまっていたのも後押しした。
1年生の時に小林正人先生の授業を取って以来、言語が好きになっていた。
思いつきで取った授業である。これぞ前期教養の魅力。興味の無い授業こそ新たな世界への窓口を提供してくれる。

第2外国語はスペイン語であったが、3学期にイタリア語とトルコ語を履修した。

後期教養なら、言語も楽しめるな...

言語学・言語科学は文学部の言語文化学科だけではなく、教養学部教養学科にもファカルティがあるのだ。

大学院はどうする?進路は?

分からなくなった。でも、当面はコンピュータと、科学史科学哲学と、言語学に触れられるのだから、いいや。

こうして、僕は教養学部学際科学科に進学する。

こうなろうとは、一体誰がいつ予想できただろうか。自分でも驚いている。
東京大学に来て本当に良かったと思う毎日である。


さて、大学院はどうするのだろうか??
書くのは修士を終える時かもしれない。