逆にこの時確かにそうなる。

逆に,このとき与式は確かに恒等式になる

存在しないことを記述するときこそ,計算言語学・知識グラフ・セマンティックウェブなどの知見を統合すべきか

本稿は,以下の2稿を踏まえている。

nipo.hateblo.jp

nipo.hateblo.jp

1つ目は,しなかったことについて書いたものである。2つ目は,想像の世界を理解不可能なところまで拡張しようという試みである。

いずれも,存在しないことを記述する試みだが,前者はありふれたフィクションで想像可能であり,後者は理解不能なフィクションである。

さて,理解不能な世界について,意味のある文章を書くにはどうするか。単に文字をランダムに並べるだけでは文章とはいえない。そこで,一旦表象の言語から離れて,背後にある事実に注目する。

例えば,「ドラえもんのび太にタイムマシンを貸し,のび太がそれを使う」という事実である。これを「ドラえもんのび太にタイムマシンを貸し,のび太がそれを使う」と書いても,「ドラえもんが貸したタイムマシンをのび太が使う」と書いても,"A time-machine Doraemon lends him is used by Nobita."と書いてもこの際どうでも良い。

これを図にするとこういう描き方ができる。もちろん,他の描き方でも良い。あるいは,XMLJSONでTripleにしても良い(RDF)。

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ここで鋭い読者はお気づきの通り,6個ある概念が,2種類に分かれているのである。すなわち,楕円で表現されている概念と,矢印で表現されている概念である。そして,行為主体である「ドラえもん」と「のび太」が同じ図形であるところ,対象物である「タイムマシン」まで楕円になっている点がびっくり仰天なのである。

これは,最後言語に変換することを想定して,名詞となりうるものを楕円に,動詞となりうるものを矢印にしたためである。そうしないと,「所有が使用貸借をドラえもんした」などという文ができてしまう。

さて,この図をさらに一般化して,スキーマにする。

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そして,存在しない概念を代入する。

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そしたら,最後に言語に変換するが,ここは一通りではない。例えば,「アッアーアアが軌しさに杜垂をごより,軌しさがそれを了扯する」と書いても,「アッアーアアがごよった杜垂を軌しさが了扯する」と書いても良いのである。今回は英語で書く場合は存在しない概念のための辞書が必要だ。

ここからが問題である。存在しない世界では,名詞や動詞がないかも知れない。あったとしても,矢印と楕円からなるスキーマが使えないかもしれない。

こうなるとメチャクチャの様相を帯びてくるように感じるかもしれないが,存在しない世界における事実は存在するので,これを記述しようとする限りではメチャクチャにはならない。例えば,アッアーアアがごよることはあっても,アッアーアアが了扯することはない(かもしれない)のだ。

従って,この存在しない世界の制約を用意すれば,なんとかして自動生成できそうである。

よく分からなくなってきた読者のために復習しておくと,これはフィクション(小説でも,映画でも,漫画でも良い)を作成するためにはどうすれば良いか,という話である。ただ,理解可能であるという,フィクションにおける行き詰まり(?)を打破したいのである。

今後誰かが作るかも知れない「アッアーアア」に関する物語では,アッアーアアが主人公(もちろん主人公という概念は存在しないのだが)ならば主人公らしく一貫性を帯びなければならないし,アッアーアアが物(もちろん物という概念は存在しないのだが)なら物として振る舞わねばならないのである。こうした一貫性を保つ以上,メチャクチャではないのである。極めて純粋な文学となるだろうが,誰も理解できないのである。