逆にこの時確かにそうなる。

逆に,このとき与式は確かに恒等式になる

自炊遍歴

自炊というのをするのだろうと思って上京したものの,ものの1~2ヶ月でやめてしまった。

まず5月21日に自炊ガチ勢などと言っている時点で,5月中にほとんど自炊していなかったことが窺える。

その後2週間で諦めの境地に達したようだ。

その後何度も自炊しようと思ってしない,自炊しようと思わない,の繰り返しだった(読者におかれては,結局自炊していないことに注意されたい)。

自炊しなかった理由はいくつもある。

覚えている限りでは,最初は野菜炒めか何かを作ったはずだ。だがこれが非常にまずかった。品目が少なすぎたのだ。確かキャベツと豚肉と,あと玉ねぎかもやしのどちらかだけだったと思う。そして,翌日に何を作ったら良いか分からなかった。

野菜などをまるごと買ってくると,その週はすべてそれを使って料理せねばならない。冷凍保存などと抜かすのはレベル128以上の人間のやることで,レベル0の僕にはできなかった。

転機が訪れたのはつい去年のことである。引っ越すついでに,心機一転自炊をしてみたくなったのである。そして,6年間の失敗をもとに,失敗しないための方策を練りに練った。

まずもって,調理技能レベルゼロ,かつ一口コンロしかないワンルームアパート,さらに,皿一つ置く場のないキッチンという最悪の主体&環境を受けとめた上で,失敗するシナリオを思い出しながらよく検討した。

まず,コンロを増やすことは現実的ではないので,一口コンロでできることしかしない,と決めた。電子レンジや電気ケトルなど電気による加熱はよく検討した。

次に,小さな調理台を購入した。皿が置けないのは論外だからである。

そして,調味料を増やさないことを重視した。塩,砂糖,醤油,みりんのみで済むレシピしか用いないことにした。なお,酒は純米大吟醸が常に余っているのでこれを用いることにした(すきやきに四合瓶5000円の日本酒を使っていたほどである)。

最後に,家で食事をする習慣を取り戻すために,3ヶ月間は自炊をせず,中食(なかしょく:外で買ってきた弁当惣菜類を家で食べること)に徹した。

迎えた4月1日,スムーズに自炊を再開できた。醤油など,1リットルのボトルで買った方が安いに決まっているのだが,自炊しなくなるだろうと思っていたので,都度小瓶を買うようにした。

とにかく続けることを優先するため,金に糸目はつけないと決めた。同じものなら高い方を買うのである(実際問題,一人暮らしの場合,どちらを買っても使い切れないので同じ値段で量の少ない方を買うべきである)。海老の天ぷら,金目の煮付け,鶏肉のコンフィ等々,酒のつまみを率先して作って,モチベーションを維持した。

ところが!あるとき,あまりにも醤油の消費ペースが速いので,もう良いだろうと思って1リットルのボトルを買ったのだが,その翌日から自炊をやめてしまったのだ!!!人間はこうも信用ならないものか!!

僕は大変影響を受けやすいようで,8月にサンタフェの国際会議に行き,そこで毎日アメリカントラディショナル朝食なるもの(メニューにそう書いてあった)を食べて,これは良いと思ったのだ。そして,帰国後毎朝それを作った。自炊復活である。ベーコンまたはソーセージ,スクランブルエッグ,トースト,サラダの4品目である。朝起きて10分で作って,5分で食べて,5分で洗い物をして出かけていた。これを60日続けた。毎朝全く同じものを飽きずによく食べたなと思うが,やはり飽きた。

 

自炊復活1周年の今年度4月には,よくよく反省して,先述の調味料のみを使い,調理時間が10分以下で,材料となる野菜が1つか2つで済むレシピのみをかき集め,続けることを最優先した。なすの煮浸しは素晴らしい料理だった。

さらに,酒のつまみを作るというモチベーションを思い出し,真鯛の昆布締め,マグロの塩締めもやった。これはとても楽しい。

そして迎えた今夏,フィレンツェで国際会議があり,戻ってきてからというもの,想像に難くなく,毎日パスタをやっている。すぐ感化される。

一人暮らし学生の自炊において,スパゲッティは極めて標準的な選択肢とされている。理由は,麺が安い,ソースも100円くらいで売っている,最悪塩をかけて食べれば良い,などである。ところが,経験上,僕はこれが続かなかった。なぜなら,まずいからである。

サイゼリヤで400円のスパゲッティを家で作ると200円で済むから「安い」のであって,200円相当のスパゲッティを200円かけて作ってもそれは安くないのである。

一口コンロでは,ソースと麺を同時に調理できない。苦肉の策として,電子レンジでソースを温めたり,電気ケトルに突っ込んだりしたが,麺と絡まないので論外だった。

そこで今夏においては,まずモチベーションが異なり,あのおいしかった「ピチ・カチョ・エ・ペペ」を再現したいのであった。帰国するなり,カルディで150グラム700円のチーズを買ってきて作ったのだが,これが全然ダメなのである。

しかし,気付いたことがあった。大失敗したのに,チーズが良いので美味しいのである。そこで,現地の日本人が言っていたことなどをもとに色々調べてみると,材料依存のシンプルなパスタがいくつかある。材料依存の良いところは,材料さえ良いものを揃えれば,ヘタクソでも旨いという点である。これは僕にはピッタリである。さらに,材料が良いので味付けなどはほとんど不要で,余計なことをしなくて良いのである。これも僕にはピッタリである。以上の論点から,バカみたいに毎日繰り返しているメニューがこれだ:

  1. カチョ・エ・ペペ(チーズ,黒胡椒)
  2. カルボナーラ(チーズ,黒胡椒,卵黄,パンチェッタ)
  3. アッラッビアータ(トマト缶,唐辛子,にんにくチューブ
  4. アマトリチャーナ(チーズ,トマト缶,パンチェッタ)
  5. アーリオ・オーリオ・エ・ペペロンチーノ(唐辛子,にんにくチューブ

チーズは,ペコリーノ・ロマーノまたはパルミジャーノ・レッジャーノを使っている。調味料は,塩とオリーブオイルのみである。

使う材料と手順の少なさとは裏腹に,旨いのである。この5種類をローテーションしている。1ヶ月が経った。セブンイレブンでスパゲッティを買わなくなった。パスタの良いところは,ソースだけでなくパスタも変えることができ,スパゲッティ,スパゲットーニペンネブカティーニリングイネを回している。

コストは,チーズが高いので,カルボナーラで大体550円~600円である。

家で僕が作るパスタはまずいという認識があったのだが,改められた。一口コンロでは,先にパスタを茹でておいて,その後フライパンでソースを作り,パン内でパスタと絡ませている。別にパスタがくっつくこともない。

そこで,学習しない僕はパスタを大量に発注した。数キログラムの小麦粉の塊が専門書の横に積み上がっている。