キャッシュレス社会の行き着くところ
「お待たせいたしました~」
(ピッピッ,ピポッ,ピッヌゥ)
「26円です。」
『現金で』
「はい?」
『現金で』
「現金,現金ですね,ええ,少々お待ちください。」
「副店長~~~」
「ん?」
「お客様が現金で支払いたいって」
「現金?!」
「ええ,現金なんですが」
「現金なんてもうヤクザくらいしか使っていない時代だというのに」
「えっ」
「とにかく代わるわ」
「ありがとうございます」
(ガサゴソ)
「え~っとお釣り箱お釣り箱……あった」
「お客様~大変お待たせ致しました~現金ですね~」
(1000円紙幣を出す)
(こ,これがお札か・・・平成時代のドラマの再放送でしかみたことがなかったが・・・)
(うっわ懐かしいな~,しかもまだ北里柴三郎なんだな)
(ピッピッピッピポスゥ)
(00ってこういう時のためにあるキーだったのか!!)
「お釣りが974円ですね~」
(スイッスイッスイッ)
(俺の指,まだ小銭の扱い覚えてるわ・・・)
(なんて軽快な硬貨さばき・・・)
「ありがとうございまたおこしくやせ~~」
『ごちそうさま~』
「お前,現ナマ見たことあるか?」
『いえ,ないっす,映画でしか』
「この世界でやっていくならな,本物を知っとかねえと,まずいぞ」
『へい』
「もうだいぶ前のことになるけどな,でけえ取引をやったときに,若いのが現ナマ取りに行ったんだよ。」
『へい』
「中身も確認してきたって言うんだけどさ,本物見たことなかったんだよ。」
『へい』
「中身ウォンだったんだよ」
『はあ』
「あと大変だったんだから」
『へい』
「こっちも10人くらい死ぬ羽目になったのよ」
『ヌウ』
(財布を取り出す)
(うわっ,これなんだっけ,財布だ!初めて見た~!)
「これが1万円」
『へい』
「よく覚えとけよ」
『へい』
日本銀行法 第46条2