逆にこの時確かにそうなる。

逆に,このとき与式は確かに恒等式になる

「大学院生は『学生の延長』ではない。研究の実質を担っている。」と政治に訴えてきた

今年の2月22日に,某参議院議員に手紙を送った。内容は,学振の制度を改善して欲しいというものである。

1ヶ月ほどして,党の職員から議員に渡したという旨のメールが来た。参考にさせて頂きます,という内容だったので,そんなにガッツリ取り上げてはもらえないだろうなと思った。

しかし,ふと政治に思いをめぐらせてみると,有権者の側が遠慮する筋合いはないのである。困っていることがあれば何でも言うべきである。利害の調整役は政治家の方であって,こちらではない。こちらが遠慮すればそれは無かったことになる。

そもそも大学院生という少数派(といっても25万人もいるのだが)への理解がないのではないか。親戚一同,小中の友人知人仲の悪い人,思いつく限りの人脈で,院生の実情を知っている人は何人いるだろうか。況や政治家や政党職員に何人いるだろうか。

いるわけない。これは話を聞いてもらうよう要望しなければならない。そこで,有効な手段かは不明だったが,「話を聞いて欲しい」という主旨の手紙を5月14日に送った。

すると,翌日に電話がかかってきて,「話を聞くので党本部に来て下さい」と言われた。簡易書留2回分の郵便料金は報われたのである。今日,行ってきた(ちなみに,博士号(専門職学位を除く)の取得者の割合が最も高い政党を選んだ)。

国会議員は予定が合わなかったために同席しなかったが,職員2名と僕の3人で話をした。僕が出した要望は以下である。

(またとない機会かもしれないと思ったので,Twitterで募ってみたがあまり反応は無かった)

  1. 大学院生は,学生の延長というよりも,大学において実質的に研究を担っている研究従事者であると定義してほしい。
  2. 大学院生はいい大人なので,親の保護下にあるという前提を取っ払って支援策を考えて欲しい。第一,子育ての一環に「大学院」を入れている親がいるのだろうか。
  3. 研究に従事するのが大学院生なのだから,研究に専念できるだけの生活保障をしてほしい。
  4. 現行の学振特別研究員,リーディング大学院,卓越研究員の制度の拡充及び改善。東京で一人暮らしをする大学院生と,地方で実家暮らしをする大学院生の支給額が同じなのはおかしい。また,運営費交付金が足りないのをいいことに,国から大学院生に支給された奨励金を学費という形で大学が回収するのはおかしいのでやめてほしい。また,事実上給付型奨学金の性質を帯びているのだから,非課税とするべきである。
  5. 日本学生支援機構奨学金の免除枠の更なる拡充と,返済の所得控除。
  6. キャリアパスの拡充。研究者以外の道が担保されないのは困る。公務員・民間企業で博士課程出身者が活躍できる仕組みを作れないか。
  7. もっと話を聞いて欲しい。大学院生に対する政治の取り組みを発信して欲しい。

予想していた反応ではあるが,予算の必要な政策については,直ちにどうにかするのは難しいとのことである。5の所得控除は何か良いロジックはないかと聞かれた。

ただ,何もしないということではなく,課題として認識されたので,どこまで具体的になるかは不明だが,来月官房長官に出す政策提言に盛り込んでいきたいとのことだった。

若手研究者はもちろん,大学院生も一枚岩ではない。僕が要望した項目について,「は?」と思う人もいるだろう。学振の奨励金を増やせ,と言っている人もいれば,あんな制度はやめてしまえと言っている人もいる。そもそも「自分はなんとかなっているのでどうでもいい」という人もいるだろう。

今回,もう少し大がかりに,何人か院生を集めてヒアリングを行う考えもあったらしい。できなかったのは,誰に声をかけたら良いか分からなかったから。医療であれ,介護であれ,労働であれ,窓口となってくれる団体があるところは,そこに話を聞きに行けば良いが,大学院生の業界団体は無い。

だから,こっちからアプローチをかけるしかないのであった。僕は郵便を2通送っただけである。電話でも良いかもしれない。要望することがあれば,遠慮なく言えば良いのである。言わないと,その問題は無かったことになる。一番意味が無いのは,ツイッターでああしろこうしろとつぶやくことである。そっくりそのまま,葉書に印刷して送ったらどうか。

研究の合間の休憩時間に,めいめい思いの丈を書いて政党に送りつけるのをやって欲しい。もちろん,話を聞いてもらうだけでは,実現にこぎつけることは難しい。世論を形成してかないといけない。待機児童の問題だって,昔から課題はあったが,「保育園落ちた日本死ね」がきっかけで一気に火がつき,選挙の争点,つまり政局になったので一気に事が動いた。研究が忙しいので人を集めてデモ行進する余裕はないが,25万人いる大学院生が一斉に(書いてあることがバラバラでも)手紙を送りつけたら社会現象になるかもしれない。

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その後

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